位置検出技術を応用したワイヤレスな教室環境の構築と評価

教育学系 臨床教育学講座 教育工学
13515810 中野由章

第1章 序論

1.1 研究背景

  • 近年,RFID(Radio Frequency IDentification)タグを活用したさまざまな研究が各方面で活発に行われている
  • RFIDタグ
    • 心臓部であるICチップ
    • 情報を外部と送受信するためのアンテナ
  • 形状
    • 微細なチップ
    • カード
    • キーホルダ大のもの
    • etc.
  • 特徴
    • 取り扱えるデータ量がバーコードの100倍以上
    • 非接触で情報にアクセスできる
  • 2010年段階でRFIDによる経済波及効果が最大31兆円に達するとの見込み
    • 総務省の「ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査研究会」最終報告(2004年3月30日)
  • 適用範囲
    • 物流
    • 販売
    • 交通
    • 食品
    • 金融
    • 医療・薬品
    • リサイクル
    • 高齢者対策
    • 教育
    • エンタテインメント
    • 防災
    • 個人生活
    • etc.
  • 教育利用分野における期待は,ごく初歩的なものに限定
    • 図書管理
    • 教育用コンテンツ管理
    • etc.
  • 理由
    • 単なるバーコードの置き換えとみなしている
    • 個々の識別とその管理という点から捉えている
  • 人間を対象とした識別と管理については,より慎重に取り扱う必要
    • プライバシーの保護
    • 不必要な管理からの解放
  • 学校や教員
    • その児童・生徒を監督する義務
    • 個々人の行動を把握・記録した情報に依拠した指導や助言
  • 「教育の情報化」
    • 「ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)」(1999年12月19日)
      • 2001年度までに,全ての公立小中高等学校等がインターネットに接続でき,すべての公立学校教員がコンピュータの活用能力を身につけられるようにする。
      • 2005年度を目標に,全ての小中高等学校等からインターネットにアクセスでき,全ての学級のあらゆる授業において教員及び生徒がコンピュータを活用できる環境を整備する。
    • 「e-Japan戦略」(2001年1月22日)
      • 情報リテラシーの向上
      • ITを指導する人材の育成
  • ミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」を早期に達成
  • 教員のIT研修の機会を設ける
  • 「IT新改革戦略」(2006年1月19日)
    • 教員のIT活用能力を一層向上
    • 優良な教育用コンテンツの整備
  • RFIDタグという革新的技術
  • 教育の情報化という危急的課題

1.2 本研究の目的と方法

  • 目的
    • 人やモノの位置情報を可視化
    • 革新的な教室内教育環境の実現
  • 人やモノの位置情報の可視化
    • バレーボール
      • 各選手の動きをリアルタイム把握し,その場で分析
      • データを蓄積してその内容を分析することで科学的・合理的に改善
    • 教員養成・教員研修
      • 教室内における教員の行動様式
  • 革新的な教室内教育環境
    • 教員および関連する人やモノの教室内における位置を特定
    • 従来ではできなかったような効果的な教育環境

1.3 本研究の構成

  • 第1章
    • 本研究の背景及び研究目的,方法
  • 第2章
    • RFID周辺の技術的背景を踏まえ,先行研究事例について分析
  • 第3章
    • 屋内位置情報システム(In House Positioning System)を使った実践
      • バレーボール選手の行動パターン
      • 教室内における教員の行動軌跡
  • 第4章
    • 次世代型の教室を提案し,その有効性を検証
  • 第5章
    • 総括と今後の展望

第2章 RFID周辺の技術的背景

2.1 RFIDに関する技術

  • RFIDの種類
    • passive型
      • 電源を内蔵せず,外部のリーダから電力の供給を受ける
      • タグの製造にかかるコストが安価
      • タグ本体を数ミリサイズに収められる
      • 非接触インタフェイスである
      • 身近な応用事例:ICOCAやPiTaPa?,おサイフケータイ,回転寿司の会計計算,etc.
    • active型
      • 電源を内蔵してタグから能動的に電波を出す
      • 通信距離が長く取れる
      • センサを内蔵して能動的にその変化を通知することが可能

2.2 RFIDに関する標準化団体の動き

  • 無線による固体識別の起源
    • 敵味方識別システム(Identification Friend or Foe system:IFF)
      • 1940年代の第2次世界大戦中に英空軍によって開発
  • 現在のようなしくみのもの
    • Communication by Means of Reflected Power
      • 1948年にHarry Stockmanが反射波による通信の可能性について指摘
    • RFID技術情報を一般に公開
      • 1975年にロス・アラモス研究所
    • passive型RFIDタグが実用化
      • 1980年代
    • RFIDの応用研究が進行
      • 1990年代
  • Auto-ID Center
    • 1999年にMITで設立
    • ある物体がどこにあってもコンピュータシステムにより即時に識別できる次世代のオブジェクト識別技術を研究する
  • RFIDに関する標準化団体
    • EPCglobal
      • Auto-ID Centerから発展的に発足
      • 研究開発組織:Auto-ID Labs.(MIT以外に,日本,英国,豪州,中国,スイス)
      • 主に流通関連での利用技術の開発と標準化
    • ユビキタスIDセンター
      • ユビキタスコンピューティング環境実現のため,全てのモノの識別

2.3 RFIDの応用に関する先行事例

  • 多くはpassive型RFIDを活用したものであり,active型RFIDを用いたものは,まだ殆どない
  • ショッピング補助ロボットの実証実験
    • 北九州市のショッピングセンター
    • ロボットによる,年配者や体の不自由な人のショッピング補助
    • active型RFIDタグ
      • 制御を行う人間をロボットが識別するため
    • passive型RFIDタグ
      • ロボットの位置検出
      • 50cm四方に12枚のタグ→総数5700枚
  • 大須実証実験
    • 名古屋市の商店街
    • 該当店舗の広告情報を携帯電話に配信
    • active型RFIDタグ
      • 商店街の各店舗先に設置したリーダでユーザを検出
      • 設営自体は容易
  • グーパス,あんしんグーパス
    • 位置情報に応じた情報を携帯電話に配信
    • 保護者の携帯電話に子どもの位置情報を配信
    • PiTaPa?(passive型RFIDタグ)
  • 立教小学校
    • 児童の登下校を正確に把握して安全を確保
    • active型RFIDタグ
      • 意識的に認識させるという行為が不要
      • リーダとの距離がある程度許容される
      • RFIDタグを紛失しても個人情報の流出が殆どない
      • 微弱電波であるため身体的影響が考えられない
  • ユビキタス街角見守りロボット社会実証実験
    • 大阪市中央区中央小学校区
    • 通学路に設置されている自動販売機に,RFIDタグリーダやリモートカメラなどを設置して安全・安心なまちの実現を目指す
    • active型RFIDタグ

2.4 RFIDの持つ問題点とその解決法

  • RFIDによる高い情報収集能力
    • トレーサビリティ
    • 個人情報保護
  • システム設置についての労力とコスト
    • 北九州市の事例では5700枚にも及ぶRFIDタグを敷き詰め,さらにその1枚1枚をそれぞれの位置情報と紐付ける作業が必要
  • active型RFIDタグによる位置検出分解能

第3章 屋内位置情報システムの試作とその評価

3.1 位置情報の可視化とデータベース化

  • 位置情報をリアルタイムに可視化
  • 移動軌跡をデータベース化
  • RFIDを用いて人の位置情報をトラッキング
    • 設営や撤去はユーザ自らが簡便にできることが必須
    • active型RFIDタグとリーダを用いる
      • 設営の簡便さ
      • 同時トラッキング数
      • 省電力
      • 送信データ量
      • 携帯性

3.2 バレーボール選手の移動軌跡の分析

  • 各選手の動きの指導や傾向の把握は他の競技に比べて著しく重要
  • 体育館内のコート周囲にリーダを配置
  • 各選手はactive型のRFIDタグを所持
  • リアルタイムに移動軌跡を把握
  • 複数選手を同時に追跡
  • データの加工・保存
  • 新しい指導法の開発可能性

3.3 教員の行動パターンの分析

  • 机間巡視等における教室内移動パターン
  • 熟練教員の行動パターンからその特徴的なものを抽出
    • 机間巡視等のgood practiceを指示・援助するシステムの開発可能性

第4章 次世代型教室の提案と評価

4.1 「教育の情報化」と「教室の情報化」

  • 「教育の情報化」の推進が緊要の課題
    • 教員のICT利活用能力の向上
    • 教育用ディジタルコンテンツの活用促進
  • 「教室の情報化」が必要
    • ほとんどの教員にとって,便利で使いやすいもの
    • 全ての教室に導入が可能な現実的なコスト
  • 既に実用化されていて高い効果をあげているもの
    • Virtual InkのmimioやLuidiaのeBeamなど
      • ホワイトボードや黒板にプロジェクタで投影されたPCの画面をインタラクティブに操作できる
      • $650程度から入手できる
      • 既存のホワイトボードや黒板に取り付けるだけ
      • 特に使いこなすための技能を要しない
      • 非常に安価に実用的なシステムを一斉導入することをが可能
      • インタラクティブボードはオブジェクトに直接働きかけるので,聞き手の視線を集めやすく,正確な情報を共有しやすい
      • 電子ペンの位置情報を赤外線と超音波を利用して検出

4.2 教室内位置情報と次世代型教室

  • 次世代型教室のイメージ
    • 天井や壁面に埋設された可動プロジェクタや仮想キーボード等が,RFIDにより位置検出を行うことでそのユーザを追跡して,ユビキタスなPC操作環境やプレゼンテーション環境を実現
    • 現状の教室では対応が難しく,普及には時間を要する
  • 現在の教室でも対応可能な,これに近い環境
    • 教員はUMPC*1を携帯して,教室内において自由な立ち位置で授業を行う
    • 指やスタイラスで板書やプレゼンテーション
    • ネットワーク接続や外部ディスプレイ出力は無線で行う
    • 教員はコンピュータの設置場所に縛られることなく,やりやすい場所で授業を展開することが可能
  • 教員の教室内位置情報とこのようなシステムを連携させ,その応用の可能性を探る

4.3 次世代型教室が切り拓く新しい教育の可能性

  • 行動範囲の制限から教員を解放することによって可能となる新しい教育方法とその効果について検証

第5章 総括

5.1 まとめ

  • 屋内位置情報システムによって可能となる,新しい教育方法や教育内容について総括

5.2 今後の展望

  • 屋内位置情報システムのさらなる応用事例についての展望
    • GPS*2などとのハイブリッドシステム
    • 休憩時間や放課後など,教員や保護者による直接の保護下にない時の児童・生徒の安全確保
      • 悪意のある第三者から保護
      • いじめや孤立などの兆候を早期に捕捉

*1 Ultra-Mobile PC
*2 Global Positioning System

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Last-modified: 2006-12-07 (木) 06:58:03 (4753d)